DevOpsとは?アジャイル開発との違いやメリット・具体例まで解説


「DevOps」という言葉を耳にする機会が増えたものの、アジャイル開発との違いやCI/CDとの関係など、疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。本記事では、DevOpsの基本概念から導入のメリット、具体例(企業事例)、DevOpsエンジニアの役割まで、初心者にもわかりやすく解説します。


目次

DevOpsとは?

DevOps(デブオプス)は、「Development(開発)」と「Operations(運用)」を組み合わせた造語で、開発チームと運用チームが密接に連携することで、迅速かつ高品質にソフトウェアを提供するための考え方・文化・プラクティスの総称です。

DevOpsには厳密な定義はありませんが、一般的には「人」「プロセス」「ツール」の3つの要素を統合する取り組みとして捉えられます。Microsoftは「継続的に顧客に価値を届けるために人、プロセス、テクノロジをひとつにまとめること」と説明しており、特定のツールや手法だけを指す言葉ではない点が特徴です。
▶ 参考:Microsoft Azure

DevOpsという考え方が広まった背景には、開発チームと運用チームの間にあった対立構造があります。開発チームは新しい機能を素早くリリースしたい一方、運用チームはシステムの安定性を維持したいため、変更を最小限に抑えたいというニーズがあります。この目的の違いから、両者の間にコミュニケーションの壁が生まれやすく、結果として開発スピードが落ちたり、リリース後にトラブルが発生したりするケースが多く見られました。

DevOpsは、こうした対立を解消し、開発から運用までを一つの連続したプロセスとして捉えることで、組織全体のパフォーマンスを高めることを目指しています。

DevOpsの4つの柱「CAMS」

DevOpsという広い概念を理解するうえで役立つのが、CAMS(キャムス)というフレームワークです。
CAMSは、2010年にMountain Viewで開催された米国初のDevOpsDaysにおいて、John WillisとDamon Edwardsによって提唱されたDevOpsの中核的な価値観を整理した考え方で、以下の4つの頭文字をとったものです。

  • C: Culture(文化)
  • A: Automation(自動化)
  • M: Measurement(測定) または Metrics(指標)
  • S: Sharing(共有)

それぞれの要素が何を意味するのか、順に見ていきましょう。

Culture(文化)は、開発と運用の間にある壁を取り払い、共通の目標に向かって協力する文化を指します。失敗を非難するのではなく、学びの機会として捉える「ブレイムレス(非難なし)」の姿勢もこの要素に含まれます。

Automation(自動化)は、ビルド・テスト・デプロイ・インフラ構築といった繰り返し作業を自動化することで、人為的ミスの削減とスピードの向上を実現します。CI/CDパイプラインやInfrastructure as Code(IaC)が代表例です。

Measurement(測定) / Metrics(指標)は、プロセスのパフォーマンスを定量的に把握する取り組みです。「測定しないものは改善できない」という考え方に基づき、データに基づく改善サイクルを回します。

なお、このMが指す内容は文献によって少し表記が揺れており、原典であるJohn WillisとDamon Edwardsの提唱では「Measurement(測定)」とされていますが、後の解説書や記事では「Metrics(指標)」と表記される場合もあります。両者の意図はほぼ同じで、「測定」が行為に、「指標」が測る対象に焦点があるという違いと捉えるとよいでしょう。代表的な指標として、リリース頻度、リードタイム、平均復旧時間(MTTR)、平均故障間隔(MTBF)などが挙げられます。

Sharing(共有)は、チーム間や組織全体で知識・経験・フィードバックを共有することを指します。サイロを解消し、組織全体で学び合う文化を育てる役割を果たします。

▶ 参考:IT Revolution

CAMSから派生したフレームワーク

CAMSは広く受け入れられた一方、後続のDevOps実践者によって発展形も提唱されています。代表的なのは、『The DevOps Handbook』の共著者であるJez Humbleが「Lean(リーン思考)」を加えて提唱した「CALMS」です。さらに、調査会社のForresterは「Sourcing(調達)」を加えた「CALMSS」を提案しています。

これらの派生形は、DevOpsを取り巻く環境の変化に合わせて、考慮すべき要素が拡張されてきたことを示しています。ただし、いずれも根底にあるのは「ツール導入ではなく、組織的な取り組みとしてDevOpsを捉える」という考え方であり、まずはオリジナルのCAMSを押さえておけば十分です。

▶ 参考:CALMS Framework - Atlassian
▶ 参考:Defining Devops as CALMSS - InfoQ

DevOpsとアジャイル開発の違い

DevOpsの概念を整理したところで、次によく比較されるDevOpsとアジャイル開発の違いを見ていきましょう。両者は対立する概念ではなく、異なる領域をカバーする補完的な関係にあります。

アジャイル開発は、2001年の「アジャイルソフトウェア開発宣言」を起点とし、変化に柔軟に対応しながら短いサイクルで価値を届けるための価値観・原則の総称です。「Don't just do agile. Be agile.(アジャイルをやるだけでなく、アジャイルであれ)」という言葉に象徴されるように、本来はマインドセットとして語られるものであり、ScrumやXP、カンバンなどはその思想を実践するためのフレームワーク(具体的な手法)です。詳しくはアジャイル開発とは?特徴・メリット・デメリット、スクラム等の手法まで解説をご覧ください。

DevOpsもまた、文化・考え方を起点とする概念であり、両者は「文化として捉えるべき」という点では共通しています。違いは、それぞれが焦点を当てる対象範囲にあります。アジャイル開発は主に「開発フェーズにおける作り方」に焦点を当てる一方、DevOpsは「開発から運用までのライフサイクル全体」、特に開発と運用の連携に焦点を当てています。

主な違いを以下の表に整理しました。

項目 アジャイル開発 DevOps
起点 開発における価値観・原則 開発と運用の連携における価値観・原則
焦点 主に開発フェーズの進め方 開発から運用までのライフサイクル全体
主な目的 変化に柔軟に対応し、価値を継続的に届ける 迅速かつ安定したリリースを実現する
関与するチーム 開発チーム中心 開発・運用・QAなど組織横断
代表的な実装手法 Scrum、XP、カンバンなど CI/CD、IaC、モニタリング基盤など

実際の現場では、両者は併用されることが一般的です。アジャイル開発で短いサイクルでソフトウェアを作り、DevOpsの仕組みでそれを安定的にリリース・運用する流れが理想的とされています。

DevOpsとCI/CDの違い

アジャイル開発との違いを押さえたところで、次にCI/CDとの関係を整理しておきましょう。CI/CDもDevOpsを語るうえで欠かせない概念の一つです。

CI/CDとは、ビルド・テスト・デプロイの一連の流れを自動化する仕組みで、CIは「Continuous Integration(継続的インテグレーション)」、CDは「Continuous Delivery(継続的デリバリー)」または「Continuous Deployment(継続的デプロイメント)」の略です。

両者の関係をひと言で表すと、DevOpsは「考え方・戦略」、CI/CDは「それを実現する具体的な手段・戦術」です。DevOpsという大きな目標を達成するために、開発からテスト、デプロイまでのプロセスを自動化する仕組みがCI/CDだと考えるとわかりやすいでしょう。代表的なCI/CDツールには、GitHub Actions、GitLab CI/CD、Jenkins、CircleCIなどがあります。

CI/CDの仕組みやツールについては、CI/CDとは?メリットや導入障壁、主要ツール比較まで初心者向けに解説で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

ここでDevOpsとの関係において重要なのが、CI/CDパイプラインの中で「テスト」が品質を担保する要となる点です。自動デプロイの仕組みだけを整えても、テストが不十分であれば、バグを含んだコードが本番環境にそのまま反映されるリスクがあります。DevOpsを成功させるには、テスト自動化の整備が不可欠なのです。

DevOpsを導入するメリット

DevOpsの概念や関連する仕組みを整理したところで、実際に導入することでどのようなメリットが得られるのかを見ていきましょう。ここでは、DevOpsを導入することで得られる代表的なメリットを4つ紹介します。

リリースサイクルの高速化

DevOpsの最大のメリットは、リリースまでのリードタイムを大幅に短縮できることです。CI/CDによってビルド・テスト・デプロイのプロセスが自動化されるため、従来は数週間かかっていたリリース作業が、数時間から数分で完了するケースもあります。

リリースサイクルが速くなることで、市場の変化や顧客のフィードバックに素早く対応できるようになります。

品質と安定性の向上

自動テストと自動デプロイの仕組みにより、人為的なミスを大幅に削減でき、ソフトウェアの品質と安定性の向上につながります。また、小さな単位で頻繁にリリースすることで、問題が発生した際の原因特定や修正も容易になります。

リリースのたびに数百行のコードを変更するよりも、数十行の変更を頻繁にリリースする方が、リスクは小さくなります。

開発と運用のコラボレーション促進

DevOpsは単なる技術的な取り組みではなく、文化的な変革も含みます。開発チームと運用チームのサイロが解消され、お互いの状況を理解しながら協働できるようになります。

DevOpsの先駆的企業として知られるAmazonの「You build it, you run it(作った人が運用する)」というポリシーが象徴的ですが、自分が作ったコードの運用にも責任を持つことで、設計段階から運用を意識する文化が醸成されます。

障害対応・改善サイクルの加速

本番環境のモニタリングと、その結果を次の開発に活かすフィードバックループが構築されることで、継続的な改善サイクルが回ります。障害が発生した際の検知・対応・復旧までの時間も短縮され、サービスの可用性が高まります。

DevOpsの具体例(企業の導入事例)

DevOpsを導入するメリットのイメージが掴めたところで、実際の企業における導入事例を見ていきましょう。海外の有名事例だけでなく、日本企業の取り組みも取り上げます。

Netflix(代表的な海外事例)

DevOpsの代表例としてよく挙げられるのが、動画配信サービスを提供するNetflixです。1日に数百回のデプロイを実行し、サービスの継続的な改善を高速で回しています。

特に有名なのが「Chaos Monkey(カオスモンキー)」というツールです。これは本番環境で意図的に障害を発生させることで、システムの耐障害性を日常的に検証するアプローチで、「カオスエンジニアリング」と呼ばれる分野の代表例です。事前に障害対応の訓練を繰り返すことで、実際の大規模障害にも冷静に対処できる体制を築いています。

メルカリ(Webサービス分野の日本事例)

国内のフリマアプリ最大手であるメルカリは、技術ブログでCI/CDの具体的な取り組みを継続的に公開しており、日本企業のDevOps実践例として参考にしやすい企業の一つです。

2021年に立ち上げられたショップ機能「メルカリShops」では、GitHub ActionsをベースにしたCI/CDパイプラインを構築。Self-hosted runnersを活用して開発環境と本番環境を分離し、本番デプロイには他メンバーの承認を必須にするProtection Ruleを組み合わせるなど、スピードと安全性を両立させる工夫が紹介されています。

ルネサスエレクトロニクス(製造業・組込みソフトウェア分野の日本事例)

DevOpsはWebサービス企業だけのものではありません。半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスは、車載ソフトウェア開発にDevOpsとCI/CDを導入し、リリース頻度を24倍に向上させたと報告しています。

ADAS(先進運転支援システム)や自動運転といった、高い信頼性が求められる領域で、グローバル拠点を横断する共通開発インフラを整備し、運用ルールやプロジェクト管理方法を含めて変革を進めた取り組みです。「DevOpsはWebサービス向けの考え方」と捉えられがちな中、組込みソフトウェアの世界でも実践が広がっていることを示す好例です。

DevOpsの導入方法

具体的な事例でDevOpsのイメージが掴めたところで、実際に導入する際の進め方を見ていきましょう。ここでは、これから導入を検討している組織が押さえておきたい基本的なステップを4つ紹介します。

ステップ1: 現状の評価

現在の開発・運用プロセスを可視化し、ボトルネックや課題を洗い出します。リリース頻度、リードタイム、障害発生率などの指標を測定すると効果的です。

ステップ2: 目標の設定

「リリース頻度を月1回から週1回にする」など、具体的で測定可能な目標を設定します。チーム全員で共有することが重要です。

ステップ3: ツールの選定とCI/CDパイプラインの構築

目標達成に必要なツールを選定し、ビルド・テスト・デプロイの自動化を段階的に進めます。

ステップ4: 文化変革の推進

ツール導入と並行して、チーム間のコラボレーションを促進する文化づくりに取り組みます。定期的な振り返りや情報共有の場を設けることも有効です。

DevOpsを導入する際の注意点

導入の進め方を押さえたところで、あわせて知っておきたい注意点も確認しておきましょう。DevOpsの導入は決して簡単ではなく、よくある落とし穴も存在します。失敗を避けるために、特に意識したい3つのポイントを紹介します。

ツール導入だけでは成功しない

DevOpsの本質は「文化」にあります。CI/CDツールやコンテナ技術を導入しただけで、チーム間の壁が自動的に崩れるわけではありません。

開発チームと運用チームが互いの仕事や課題を理解し、共通の目標に向かって協力する関係性を築くことが、ツールの選定よりも先に取り組むべき課題です。

自動化の前に手動プロセスの見直しが必要

非効率なプロセスをそのまま自動化しても、効果は限定的です。「手動でも不要な作業」を自動化してしまうと、不要な処理が高速で実行されるだけの仕組みになりかねません。

まずは現状の業務プロセスを棚卸しし、無駄な工程を削減してから自動化に着手するのが効果的です。

セキュリティを後回しにしない(DevSecOps)

リリース速度の向上を優先するあまり、セキュリティチェックが後手に回ると、リリース後に脆弱性が発覚するなどのリスクが高まります。

近年では、セキュリティをDevOpsのプロセスに最初から組み込む「DevSecOps」という考え方が広まっています。CI/CDパイプラインの中に、脆弱性スキャンやセキュリティテストを組み込むアプローチが推奨されています。

DevOpsの実践ポイント

注意点を踏まえたうえで、DevOpsを効果的に実践するために現場のエンジニアが意識したいポイントを3つ紹介します。

小さく始めて段階的に拡大する

組織全体に一気にDevOpsを導入しようとすると、関係者が多くなり、文化変革の難易度も上がります。まずは特定のチームやプロジェクトで小さく始め、成功事例を作ってから横展開する方が現実的です。

例えば、新規プロジェクトでCI/CDパイプラインを構築し、その効果を社内で共有することから始めるのも一つの方法です。

テスト自動化を早期に組み込む

CI/CDの仕組みを活かすうえで、テスト自動化は欠かせません。デプロイの自動化だけを整えても、テストが手動のままでは、結局リリース前のテスト工程がボトルネックになってしまいます。

テストのレイヤーに応じて、適切な自動化を進めることが重要です。

特にE2Eテストは、テストコードの作成と保守に工数がかかりやすい領域です。最近では、ノーコード・ローコードでE2Eテストを作成できるツールも増えており、MagicPodのような選択肢を活用することで、開発者以外のメンバーもテスト自動化に貢献できる体制を作りやすくなっています。

モニタリングとフィードバックループを構築する

DevOpsは「リリースして終わり」ではありません。本番環境のメトリクスやエラーを継続的に観測し、得られた知見を次の開発サイクルに反映することで、改善のループが回ります。

Datadog、New Relic、Prometheusなどのモニタリングツールを活用し、システムの状態を見える化することが第一歩です。

DevOpsエンジニアとは?求められるスキルと役割

最後に、近年現場で広がりを見せている「DevOpsエンジニア」という職種についても触れておきましょう。ここでは、その役割と必要なスキルを紹介します。

役割と責任

DevOpsエンジニアは、開発と運用の橋渡しを担い、ソフトウェア開発のライフサイクル全体の効率化を目指す役割です。具体的な業務範囲は組織によって異なりますが、一般的には以下のような業務を担当します。

  • CI/CDパイプラインの構築・運用
  • インフラの自動化(Infrastructure as Code、通称IaC)
  • コンテナ・オーケストレーション環境の整備
  • モニタリング・ロギング基盤の構築
  • セキュリティ対応(DevSecOpsの推進)
  • 開発・運用チーム間のコラボレーション促進

ただし、「DevOpsエンジニア」という肩書きの仕事内容は組織によって幅があり、SREやインフラエンジニアと境界が曖昧なケースもあります。

DevOpsエンジニアに求められる主要スキル

DevOpsエンジニアには、技術的なスキルとソフトスキルの両方が求められます。

技術的なスキル:

  • CI/CDツールの知識: GitHub Actions、Jenkins、GitLab CI/CDなどの実務経験
  • クラウドの知識: AWS、Azure、Google Cloudなどの主要クラウドサービス
  • インフラ自動化(IaC): Terraform、Ansibleなどによる構成管理
  • コンテナ・オーケストレーション: Docker、Kubernetesの理解
  • スクリプト言語: Python、Bash、Goなどによる自動化スクリプトの作成
  • モニタリング: Datadog、Prometheus、Grafanaなどの活用

ソフトスキル:

  • 開発・運用・QAなど、異なる役割のメンバーとコミュニケーションする力
  • 問題の本質を見極め、根本原因を探る分析力
  • 新しい技術を学び続ける姿勢

DevOpsエンジニアの仕事はツールの導入だけにとどまらず、チーム間の橋渡しという側面が大きい点が特徴です。

まとめ

本記事では、DevOpsの基本概念から、アジャイル開発・CI/CDとの違い、導入のメリットや注意点、DevOpsエンジニアの役割まで解説しました。 ソフトウェアエンジニアとしては、CI/CDの仕組みを理解し、自身が書くコードがどのようにテストされ、本番環境に届けられるかを意識することが、DevOpsへの第一歩になります。テスト自動化やモニタリングなど、関連する領域から少しずつ知識を広げていくとよいでしょう。

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著者 MagicPod 編集部

著者 MagicPod 編集部

MagicPodは、ノーコード AIテスト自動化ツール「MagicPod」の開発・運営を行っています。本編集部では、ソフトウェアテストに関わる知見をもとに、最新トレンドや品質向上のノウハウなど、現場で役立つ情報をお届けします。

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