CI/CDパイプラインにAIを組み込んで高速リリースを実現する4つの方法
毎週のように新しいコーディングアシスタントが登場し、「開発スピードを50%向上させる」といった話題で注目を集めています。
開発の仕様書さえあれば、実際にコードを書くことなく本番環境へデプロイできる――そんな未来が現実になりつつあり、開発チームはこれまで以上に多くの製品や機能をリリースできるようになっていきます。
ところが実際には、「コードを速く書ける」ことは必ずしも「リリースが速くなる」ことを意味しません。
AIが生成するコードにはセキュリティ上のリスクが潜んでいる場合があり、さらに、失敗する可能性の高いテストを生み出してしまうと、リリースの信頼性やスピードを大きく損なうことにもつながります。
では、どうすればAIを活用して「速く書く」だけでなく「速く届ける」ことができるのでしょうか。
その答えは、CI/CDパイプラインにおける重要なポイントでAIを適切に活用することにあります。ここからは、リリースを加速しつつ品質を高めるための4つの領域を見ていきましょう。
目次
1. AI生成コードの品質チェック
私たちは、AIが生成したコードを信頼してしまう傾向にあります。
最初は慎重にAIから生成されたコードを確認していても、何度も正解を返してくれるうちに少しずつ信頼が積み重なり、やがてレビューなしで提案を受け入れてしまうこともあります。
しかしAIが生成するのは「過去の学習結果」にすぎず、完璧ではありません。バグを含むコードを生成することもありますし、コードが一見すると非常に完成度が高く見えるため、発見が難しくなります。特にデータ処理や決済処理といった重要機能で問題が起これば、大きなリスクにつながります。
ここで役立つのが、AIによるコードの品質保証です。例えば、SonarSource の SonarQube AI Code Assurance を使えば、AI生成コードの品質やセキュリティを自動で検証できます。CI/CDパイプラインに組み込むことで、レビューでは見逃されがちな不具合を早期に検出できます。
導入は簡単で、プロジェクト設定とパイプラインへの統合を済ませれば準備完了です。以降は自動的に解析が走り、人間・AIを問わずすべてのコードがこの品質ゲートを通過し、本番環境に適用されるようになります。
2. セキュリティテスト
多くのスタートアップではリソース不足から、セキュリティ対策が後回しにされることも少なくありません。
また、顧客や投資家の要望に応えることを優先するあまり、セキュリティテストは軽視されがちです。その結果、脆弱性についてはユーザーからのインシデント報告によって初めて発覚することもあります。問題発覚時には、すでにデータが流出していたり、エンジニアが週末に徹夜対応を強いられる事態は珍しくありません。
これを防ぐには、「事後対応型」から「予防型」への転換が重要です。そのための手段として、セキュリティ監査フェーズにAIツールを組み込むことが有効です。
例えば、Snyk の DeepCode AI は、コードがプッシュまたはマージされるたびに脆弱性をスキャンできます。導入方法もシンプルで、CI構成ファイルにAPIキーを追加し、ワークフローにスキャンのステップを組み込むだけです。
継続的にスキャンを実施することで、潜在的な脆弱性を早期に発見しながら、安心して機能を素早く提供できます。結果として、ユーザー満足に集中できる環境を整えることができます。
3. 自動修復(セルフヒーリング)によるテスト
テストの保守は非常に時間がかかる作業です。特にフロントエンドでは、UIのちょっとした変更でテストが壊れてしまうため、大きな負担となります。
新機能を追加してプッシュした際、機能自体には問題がないのに、UIのレイアウトを少し変更しただけでテストが失敗してしまうことがあります。こうした経験をしたことがあるエンジニアも多いでしょう。
この問題を解決するのが 自動修復(セルフヒーリング)によるテスト です。自動修復とは、ボタン名の変更(例:「登録」から「新規登録」)などUI要素の変更を自動で検知し、テストを自動で適応させる仕組みです。CI/CDパイプラインに組み込むことで、古いテストが原因でビルドが失敗するのを防げます。
MagicPodは、この自動修復機能を提供するテスト自動化ツールです。導入も簡単で、CI/CDに組み込めばフロントエンドアプリのテストを自動修復しながら実行できます。これにより保守の負担を減らし、新機能をより速くユーザーに届けられるようになります。
4. AIによるモニタリング
アプリの監視方法には、大きく分けて2つのアプローチがあります。
- デプロイ後にアラートを設定し、問題が発生したら対応する方法
- 事前に異常を検知し、問題が起きる前に防ぐ方法
もちろん、多くの人が望むのは後者でしょう。
HarnessのようなAIツールを使えば、それが可能になります。既存のPrometheusやDatadogといった監視基盤に統合することで、アプリケーションの「通常の挙動」を学習させられます。実行中の挙動と過去のデータを比較し、異常なパターンを検出するとアラートを通知します。そうすることで、ユーザー体験に影響が及ぶ前に対応できます。
コードアシスタントだけに頼らないAI活用を
コードアシスタントは確かに優れたツールです。私たちはかつてないスピードでプロダクトを開発できるようになりました。
しかし、成功するプロダクトに必要なのは「速く書く」ことだけではありません。ユーザーに迅速かつ安全に届けることが同じくらい重要です。
そのためには、コードアシスタントの利用だけにとどまらず、品質保証、セキュリティ、テスト、モニタリングといったワークフロー全体に目を向け、AIを戦略的に活用していくことが求められます。
AIをうまく組み込めば、開発チームは安心してスピードを上げ、より高品質なプロダクトをユーザーへ届けられるようになるでしょう。
Original article: https://blog.magicpod.com/places-add-ai-ci-cd-pipeline-ship-faster
参考文献
- AI in CI/CD Pipelines: How to boost software delivery with the power of algorithms
- AI Code Assurance
- Transforming Security Testing With AI: Benefits and Challenges
- 自動修復機能とは
