AI時代に輝くQAエンジニアになるために


AIは、単純で繰り返しの多い業務を急速に代替しつつあります。もしあなたの仕事がテストの実行やバグの記録といった定型的な作業に偏っているなら、今こそキャリアのあり方を見直し、スキルを磨く時です。

近年、AIの導入は一気に加速しており、少なくとも1つの業務領域でAIを活用している企業は70%を超えています。ソフトウェアテストも例外ではなく、AIや自動化ツールがテスト実行や不具合報告の大部分を担うようになりつつあります。AIは人間よりも速く正確に作業できるため、単純なタスクに頼り切ったスキルだけでは、これからの時代に生き残ることは難しいでしょう。

しかし、品質保証の本質は単なる繰り返し作業を超えたところにあります。リスク分析や創造的なテスト戦略、製品への深い理解といった領域は、依然として人間ならではの強みです。

本記事では、AIが最も得意とするタスクと不得意な領域を整理し、QAエンジニアがAI時代に輝き続けるためにどのようにキャリアを築いていけばよいのかを考えていきます。


目次

予想を超えるAIの急成長

AIはもはや実験段階を過ぎ、企業が実際に価値を生み出す手段となっています。

マッキンゼーが2024年に実施した調査によれば、回答者の65%が生成AIを日常的に活用しているとの結果が出ています。これは2023年の数字からほぼ倍増しており、AIがすでにビジネスの現場で当たり前に使われ始めていることを示しています。

GoogleやNvidiaといった大手企業も巨額の投資を行っており、経営者の中にはその影響を「電気の発明」や「iPhoneが世に登場した時」と同じくらい画期的だと例える人もいます。つまりAIは一時的な流行ではなく、今後も確実に定着していく技術なのです。

では、ソフトウェアテストにおいてどの領域が最もAIの影響を受けているのでしょうか?

最初に置き換えられるのは繰り返し作業

私自身、QAエンジニアとして働く中で、AIにより一部の作業はすでに代替されました。その結果、私はより高度な思考を必要とするタスクに集中できるようになりました。
裏を返せば、「繰り返し作業だけ」に依存していたテスターの役割は急速に縮小しているのです。

こうした変化が顕著に現れている領域の一つが、テスト設計・実行の自動化です。
たとえば、MagicPodのようなAIテスト自動化プラットフォームを使えば、ノーコードでテストケースを自動生成し、リグレッションテストやE2Eテストを効率的に実行できます。
このような仕組みにより、定型的なテスト作業の多くは短時間で完了するようになっています。

一方で、テスト自動化以外の分野でもAI活用は急速に進んでいます。
たとえば以下のような領域です。

  • 不具合の記録
    不具合の再現手順や発生条件、期待される結果などの情報を与えると、AIは詳細なバグチケットを自動で作成してくれます。これにより、記録作業にかかる手間が大幅に削減されます。
  • テストデータ管理
    テストで使用するデータの作成・管理・更新といった煩雑な作業をAIが効率化します。従来は手作業で行っていたデータ準備の多くを、自動的かつ短時間で行えるようになります。

AIはパターン認識に優れているため、こうした繰り返し型・定型型のタスクに強みを発揮します。
そこで、自分自身に問いかけてみてください。

  • 日々の業務の大半は、リグレッションテストの実行やバグ報告といった定型作業に費やされていないか?
  • それとも、テストの目的やシステムの背景を理解した上で、優先度を判断しながら取り組んでいるか?

AIでは代替できない力 ―クリティカルシンキングとリスク感覚

AIと人間を分ける最大の要素は「クリティカルシンキング」と「リスクを状況に応じて判断する力」です。

AIは不具合を見つけることはできますが、その問題がどの程度ビジネスに影響するのか、どのリリースで優先的に修正すべきかといった判断は苦手です。ここは、製品やユーザーの利用シーンを理解している人間が介在する必要があります。

また、QAにおいて重要なのは「文脈を理解したテスト」です。つまり、システムの仕様、製品の特性、利用する顧客の背景を踏まえて、どの機能を重点的にテストすべきかを見極めることです。AIはマニュアル通りのチェックは得意でも、こうした「何をどの深さで検証すべきか」という判断までは苦手です。

システム、製品、顧客の状況を総合的に理解しているからこそ、テストにおいて「必須」「あれば望ましい」「優先度が低い」といった切り分けができるのです。

AI時代に生き残るためのQA戦略

QAエンジニアが今すぐ取り組むべきことは以下の3つです。

  • 製品の専門家になる
    プロダクトマネージャーでなくても、製品を端から端まで理解することは欠かせません。この知識はリスクや重大不具合を見抜く力につながります。
  • リスク感覚を磨く
    テストは誰でもできますが、リスクを見抜き、見落とされがちなシナリオを発見できるかがQAの価値です。今後は運用的な作業がAIに任され、戦略に集中することが求められます。
  • 優れたコミュニケーション能力を持つ
    AIに作業を委ねられる時代だからこそ、プロジェクト関係者との対話に多くの時間を費やすことになります。英語のような共通言語スキルに加え、説得力や交渉力、共感力が重要です。

もし現在の役割が単純作業に偏っているなら、上司に相談し、より高度な責任を担えるように動いてみましょう。もしそれが難しければ、新たな環境を探すことも選択肢のひとつです。

AIが仕事を奪うのではない。AIを使いこなす人が仕事を制する

NvidiaのCEOであるJensen Huang氏のこの言葉は、まさにその通りです。AIはすでにQAの一部タスクを代替していますが、AIを使いこなす人こそが今後の仕事をリードする存在になります。

私自身、大規模言語モデルを導入したことで、生産性は2倍以上になりました。これからは「テストスクリプトを手で書く」よりも、AIに指示を与え、その結果を評価・改善する役割が中心になります。つまり、単なる自動化の実装ではなく、テスト全体の戦略を設計・監督する立場へと仕事が変わっていくのです。

もしまだAIを活用していないなら、今すぐ始めるべきです。どれほどスキルが優れていても、AIを使いこなす人の生産性にはかないません。参考までに「The Death of the Junior Developer」という記事では、AIによって開発者の役割がどう変わったかが解説されています。これはQAのキャリアにも重要なヒントを与えてくれる内容です。

原文:Facing 2025: How to future-proof your QA career in an AI-driven world

参考文献


原文執筆 Aldy Syah Daviq Ramadhan

原文執筆 Aldy Syah Daviq Ramadhan

自動テストと手動テストの両方に精通したQAエンジニアです。効率的なテストフレームワークの構築と、高品質なソフトウェアの提供に取り組んでいます。