プロジェクトごとのCICDパイプライン設計でリリースを加速する方法
ソフトウェアをリリースするたびに「なぜこんなに時間がかかるのか」と感じたことはありませんか?
多くのチームは汎用的なCI/CDパイプラインを利用しています。しかし、それではプロジェクト特有の要件に対応できず、リリースの遅延や品質問題を招くことが少なくありません。
もしパイプラインをプロジェクトに合わせて最適化できれば、リリースはぐっと速くなり、品質も安定します。
本記事では、その具体的なアプローチを解説していきます。
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カスタマイズされたCI/CDのメリットとは?
CI/CDを導入した当初は「ひとつのパイプラインで十分だ」と考える方も少なくありません。
しかし、実際にはプロジェクトごとに最適化することで、はるかに大きな効果を得ることができます。
カスタマイズされたCI/CDパイプラインは、開発フローを改善し、効率と品質の両方を引き上げてくれます。
特に注目すべきメリットは、次の2点です。
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時間の短縮
パイプラインを自動化することで、反復作業にかかる時間を削減できます。開発者が複数の機能を同時進行で開発している場合、コミットごとにユニットテストを回すことで「テストの待ち時間」をなくし、コーディングに集中できます。 -
問題の早期発見
アジャイル開発では、変更内容を頻繁にdev環境へ反映します。その際、CI/CDに自動テストを組み込んでおけば、dev環境での確認が始まる前に不具合を検知できます。
こうした工夫によって、効率と品質を両立しながら、リリースをより速く、より安定させることができます。
プロジェクト要件に合わせたパイプライン設計
アプリケーションの特性を無視したままパイプラインを作ると、重要な検証を見落とすリスクがあります。
そのため、パイプラインはアプリケーションのアーキテクチャを反映させる必要があるのです。
ここでは、代表的な2つのアーキテクチャを例に解説します。
モノリシックアプリケーション
モノリシックアプリはコンポーネントが密に結合しているため、変更の影響範囲が広がりやすいのが特徴です。
そのため、統合テストを重視する必要があります。また、データベーススキーマ変更に伴う本番環境での障害を防ぐために、移行テストも欠かせません。
さらに、カナリアリリースを導入して段階的にリリースするのも有効です。まず一部のユーザーに変更を適用し、問題があれば即座にロールバックできる仕組みを用意しておけば、大規模な影響を避けられます。
マイクロサービスアーキテクチャ
マイクロサービスでは、各サービスごとに専用のパイプラインを設計することがカギです。これによりフィードバックが早まり、変更の影響範囲も最小限に抑えられます。
依存関係はサービススタブを使ってシミュレーションし、さらにE2Eテストで複数のサービスが連携し、ユーザーフロー全体が期待通りに動作するかを検証します。これにより、各マイクロサービスごとの品質とシステム全体としての整合性を両立できます。
また、テンプレートの活用も効果的です。
例えば、GitHub Actionsの「Java with Maven」テンプレートを使い、そこにChrome Driverのインストールを追加する、といった工夫も考えられます。テンプレートをベースにカスタマイズすれば、パイプライン構築を効率化し、エラーを減らしつつ、チーム全体で一貫してベストプラクティスを適用できます。
パイプラインを高速・安定化させる
プロジェクトに合わせたパイプラインが整ったら、次は処理速度と信頼性をさらに高める工夫を加えましょう。
ボトルネックの特定と解消
GitHub ActionsのメトリクスやCircleCI Insightsなどのツールを活用して、処理が遅いステージを特定します。そのうえで改善すべき箇所に集中しましょう。
また、手動承認している処理は、テスト結果やコードカバレッジを基準とした自動ゲートに置き換えると効果的です。さらに、ビルド成果物(例:コンパイル済みバイナリやパッケージ)や依存ライブラリをキャッシュしておくことで、再ビルド時に同じ処理を繰り返さずに済み、大幅な時間短縮につなげることができます。
並列処理と動的実行
処理を並列化することでパイプラインのスピードを一気に高められます。ユニットテスト、統合テスト、静的解析などを並行して実行すると効果的です。
さらに、過去の実行時間に基づいてテストを均等に分割する動的並列化を導入すれば、特定のジョブだけが全体の足を引っ張ることを防げます。
パイプラインに組み込むテスト戦略
テストをパイプラインに組み込むときは、テストピラミッドを意識することが重要です。
- ユニットテスト:コミットごとに実行して素早くフィードバックを得る。
- 統合テスト:プルリクエスト作成時に走らせ、コンポーネント間の連携を確認する。
- E2Eテスト:重要なユーザーフローを対象に限定的に実行し、パイプラインの速度低下を防ぐ。
また、フレーキーテスト対策も忘れてはいけません。分析ツールで不安定なテストを特定し、リトライや隔離を行うことで、パイプラインの安定性を保ちます。
実際のケーススタディのご紹介
モノリシックアプリのデプロイ効率化
あるプロジェクトでは、モノリシックアプリのデプロイに数時間の手作業が必要でした。依存関係を分析し、ジョブを分離してメインパイプラインに接続することで、デプロイ時間を短縮し、トラブルシューティングも容易になりました。
Eコマースプロジェクトのカスタマイズ
頻繁にUIが変わるEコマースプロジェクトでは、フロントエンドとバックエンドそれぞれに適したパイプラインを構築しました。フロントエンドには「Node.js」テンプレートを使用し、ビジュアルリグレッションテストを導入。バックエンドには「Java with Maven」テンプレートを使い、サービスを止めずにアップデートできる(ゼロダウンタイム)ブルーグリーンデプロイを採用しました。これにより信頼性が高まり、リスクも軽減しました。
フィンテックでのリリース高速化
長時間のテストがボトルネックとなっていたフィンテックのプロジェクトでは、重要なテストを優先して即時フィードバックを得るよう変更しました。また、テスト影響分析を用いて不要なテストをスキップし、優先度の低い処理は後回しで実行するようにしました。その結果、リリース時間を40%削減できました。
リテールアプリでの堅牢なパイプライン
アジャイルで開発されるリテールアプリでは、包括的なテスト統合が不可欠でした。フレーキーテストを監視・管理し、自動再実行や定期的なデバッグを取り入れることで、迅速かつ安定したリリースを支える堅牢なパイプラインを構築しました。
まとめ
プロジェクトごとのニーズに合わせてCI/CDパイプラインを設計することで、効率を高め、リリース時間を短縮し、コード品質を向上させることができます。
本記事で紹介した戦略を取り入れれば、チームはただリリースを「早く」するだけでなく、安心して信頼できる形で届けられるようになります。
「開発スピードを落とさず、品質も犠牲にしない」──そんな理想を実現するカギは、汎用ではなくプロジェクトに最適化されたCI/CDパイプラインにあります。今日から一歩ずつ、改善を始めてみてはいかがでしょうか。
Original article: How We Cut Release Times By Designing Project-Specific CI/CD Pipelines
