モバイルアプリがクラッシュする原因の95%は、この7つのテスト漏れ
最も使いたいその瞬間にモバイルアプリが落ちる──これほど不便なことはありません。私たちは友人とのやり取りから仕事の管理まで、あらゆるシーンでモバイルアプリを活用しています。だからこそ、アプリに不安定さを感じたユーザーは、すぐに離れていってしまうのです。
実際、最近のモバイルアプリの安定性に関するレポートでは、「クラッシュフリー率(=クラッシュせずに動作した割合)」が99.7%を下回るアプリは、例外なく低評価(通常は星3つ未満)を受けていると報告されています。中規模のアプリであれば、これだけで毎月数十万円規模(数十万〜数百万円)の損失につながるケースも珍しくありません。
では、ユーザーからの厳しいレビューをただ受け入れるしかないのでしょうか?
モバイルファーストのスタートアップでテックリードを務める私の答えは「いいえ!」です。これから紹介する7つの課題にきちんと対応すれば、アプリのクラッシュ原因の95%は未然に防ぐことができます。
それでは、1つ目の課題から見ていきましょう。
端末の多様化
現在のモバイル端末は、メーカーやモデルだけでなく、画面サイズ、性能、OSのバージョンなども非常に多様化しています。そのため、特定の組み合わせでしか起こらないバグは、とても見逃しやすい問題です。特にAndroidでは、メーカーごとのカスタマイズが多いため、Samsungでは動くのにPixelではクラッシュするというようなケースが珍しくありません。しかし、全ての端末でテストするのは現実的ではありません。では、どう対応すればいいのでしょうか?
対策:
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主要なデバイスとOSバージョンを優先的にテストする
ターゲットユーザーに最もよく使われている機種やOSに絞ることで、限られたリソースでも多くのユーザーをカバーすることができます。 -
クラウドベースのテストプラットフォームを活用する
MagicPodやBrowserStackなどのツールを使うことで、物理的に端末を用意しなくても様々な環境でテストできます。これにより、テスト範囲を広げつつコストも抑えられます。
こうしたアプローチを取ることで、端末の多様化という課題に現実的な形で対応していくことが可能です。
不安定なネットワーク環境
多くのモバイルアプリは、オフィスや自宅の高速で安定したネットワーク環境でテストされています。しかし実際のユーザーは、低速な3G回線や不安定な公共Wi-Fi、圏外になったり、移動中にWi-Fiとモバイル通信が切り替わるなど、利用シーンは様々です。こうした「理想と現実のギャップ」が、実際に使ったときのクラッシュの大きな原因になります。
対策:
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ネットワークの変化に強いアプリを目指す
Wi-Fiからモバイル通信への切り替えや電波状況の変化があっても問題なく動作するようにする
接続に問題がある場合は、ユーザーにわかりやすいエラーメッセージを表示する
重要なデータはローカルに保存しておく
可能な範囲でオフラインでも機能するようにする(例:YouTubeのオフライン再生)
接続が回復したら自動で処理を再試行する -
様々な通信環境をシミュレーションしてテストする
Charles ProxyやNetwork Link Conditionerなどを使えば、高速なテスト環境下でも低速回線や不安定なネットワーク状況を再現できます。
こうした対策を取ることで、通信環境が不安定でもユーザーが快適に利用できるアプリを提供できます。
メモリ管理の不備
メモリに関する問題は、最初は小さくても、気づかないうちに大きなクラッシュの原因になってしまいます。例えば、使い終わったデータや処理をきちんと片付けずにメモリ上に残したままにしていると、徐々に容量が圧迫され、アプリの動作が遅くなり、最終的にはクラッシュを引き起こしてしまいます。特にメモリ容量の少ない端末では、この影響が大きく出ます。
対策:
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メモリ管理を習慣化する
例えばReact Nativeでは、画面遷移時にリスナーを解除するなど、不要になった処理をきちんと終了させることが大切です。 -
メモリ使用量をチェックする
Android ProfilerやXcode Instrumentsなどのツールを使えば、アプリがどれだけメモリを使っているかをリアルタイムで確認できるため、メモリリークを見つけやすくなります。 -
こまめな確認を習慣にする
新機能追加や修正時には、必ずメモリまわりに問題がないか必ずチェックするようにしましょう。
開発の初期段階で問題に気づくことができれば、後から大きなトラブルになるのを未然に防げます。
未処理の例外
存在しないデータへのアクセスやリストの範囲外処理など、想定外のエラーが発生するとアプリは即クラッシュしてしまいます。
対策:
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安全なコードを書く
エラーが起こりやすい処理は、例えばJavaScriptならtry-catch文を使って例外を適切に処理することで、予期しないクラッシュを防げます。 -
想定外のデータでテストする
空欄や不正文字、極端な値など、想定外の入力でもアプリが正常に動くかを確認することが大切です。 -
エラーを自動で追跡する
Crashlyticsなどを利用して、いつ・どのユーザーで・なぜクラッシュしたのかを自動記録し、早期の修正につなげられます。
クラッシュする前に問題を見つけ出し、ユーザーにも状況を明確に伝えることが重要です。
ソフトウェアアップデートへの対応不足
アプリはOSのアップデートや外部ライブラリの更新など、外部要因による影響を強く受けます。そのため、アップデートに追従できないと、予期しないバグやクラッシュが起こります。
対策:
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OSアップデートに早めに対応する
新しいiOSやAndroidが出たら早期にテストし、機能が問題なく動くか確認する。 -
外部ライブラリを常に最新に保つ
古いライブラリはセキュリティ上のリスクやバグの原因になりやすいので、アップデートが定期的に行われている、信頼性の高いライブラリを選びましょう。
こうすることで、アップデートによるバグのリスクを最小限に抑えることができます。
UIに関する問題
一見些細なUIの問題でも、アプリの使いやすさを大きく損ないます。例えば、重たい処理で画面が固まる、端末ごとにレイアウトが崩れる、アニメーションが重すぎるなどの問題があると、ユーザーはすぐに離れてしまいます。
対策:
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各プラットフォームのガイドラインを守る
AndroidのMaterial DesignやAppleのHuman Interface Guidelinesなどを遵守することで、問題を未然に防げます。 -
アプリの動作を軽くする
複雑なレイアウトを避け、画像は圧縮し、派手なアニメーションを減らしましょう。 -
重たい処理はバックグラウンドで実行する
データ読み込みや計算処理は、表示処理とは別スレッドで実行することで、画面の応答性を保ちます。
併せて、様々なデバイスや画面サイズでテストを行い、あらゆる状況で快適に使えるようにしましょう。
実機でのテスト不足
シミュレータやエミュレータは便利ですが、実機特有の挙動までは完全には再現できません。例えば、権限周りのダイアログや処理速度、メモリの使われ方、タッチ操作の感度など、実機テストでこそ見える問題があります。
対策:
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物理デバイスでのテストを実施する
ターゲットユーザーに人気のある機種を中心に、実機での動作確認を行いましょう。 -
一部ユーザーへの先行提供でユーザーフィードバックを得る
本番リリース前に限定公開して一部のユーザーに使ってもらい、実際の利用環境での問題や使い勝手を確認しましょう。
これにより、仮想環境では見逃してしまうようなバグも確実に洗い出すことができます。
安定したアプリこそが信頼を生む
ここで紹介した7つの課題には、それぞれ明確な対策があります。開発やテストの段階でこれらを意識して取り組むことで、ユーザーが信頼し、お金を払ってでも使いたいと思える安定したアプリを提供できます。
それこそが、私たちが目指すゴールです。
参考文献:
- Challenges in Mobile App Testing
- 25 Common Reasons for Mobile App Crashing
- Mobile App Stability Outlook 2024
MagicPodは、モバイルおよびWebアプリケーションテストに対応したAIテスト自動化クラウドサービスです。プログラミングなどの特別なスキルがなくても直感的に使うことのできるデザイン、クラウドでのサービス提供によるメンテナンス性の高さ、AI技術を活用した自動修正によるテストプログラム修正の手間削減などによりリリースサイクルの高速化を支援します。
Original article: https://blog.magicpod.com/testing-gaps-mobile-app-crashes