「テスト自動化が続かない」はなぜ起きる?現場で本当に使われるツールとは
テスト自動化ツールの導入ハードルは、ここ数年で大きく下がった。ツールの進化や、QA・テストエンジニア間でのナレッジ共有が進んだことで、「とりあえず始めてみる」ことは以前よりも容易になっている。しかしその一方で、「導入したものの、うまく活用できていない」「気づいたら誰も使っていなかった」という声は後を絶たない。
本記事では、MagicPodでエバンジェリストを務める伊藤由貴に、テスト自動化が続かなくなる原因と、継続するためのポイント、そして生成AI時代のツール選定について聞いた。
目次
テスト自動化ツールを取り巻く現状と、現場で起きている課題
「以前はある種気合いを入れて導入するものだったテスト自動化が、かなり身近な、ある程度あって当たり前の世界になってきました」
こう語るのはMagicPodの伊藤由貴だ。ブログ記事の執筆やウェビナーでの登壇を通じてテスト自動化の普及活動を行う傍ら、既存ユーザーからのテスト自動化やQA体制構築の相談も受けている。
伊藤によれば、一昔前のテスト自動化は、費用や契約形態の都合でハードルが高く、大きな予算を組んで「導入プロジェクト」として進められることが多かった。OSSを用いる場合でも、すべて自分たちで仕組み化する必要があり、相応のパワーが求められた。
しかし現在は、ツール自体の進化とナレッジの蓄積により、状況は大きく変わっている。テスト自動化を始めること自体のハードルは確実に下がった。
ところが、導入のハードルが下がったことで、新たな課題も浮き彫りになっている。「導入はしたものの、うまく活用できていない」という現場が増えているのだ。
テスト自動化ツールが現場で続かなくなる理由
導入のハードルが下がり、テスト自動化を始めやすくなった一方で、「うまく活用できていない」現場が増えている。その背景には、推進役の不在、メンテナンス負荷の増大、周囲の巻き込み不足といった課題がある。
しかし、最も見過ごされがちなのは「ツール選定の問題」ではなく「運用・体制の問題」だ。さらに最近は、一見継続できているように見えて実は成果につながっていない「静かな失敗」も増えているという。
推進役の不在が招く形骸化
テスト自動化がうまく活用できていない現場の共通点として、「大きな要素の一つに、主担当・推進役の不在があります」と伊藤は指摘する。
「テスト自動化に限らず、なんらかのツールや方法論を導入して業務のあり方を変えていこうという場合には、それを推し進める主体が必要です。ツールを導入したり、テスト自動化を始めただけだと、だんだんと使われなくなることがほとんどだと思います」
ルール整備やベストプラクティスの共有、効果を目に見える形で社内にアピールするなど、地道な推進活動がなければ、テスト自動化は根付かない。
推進役がいても起こる2つの問題
では、推進役がいれば安心かというと、そうとも限らない。伊藤は、推進役がいても形骸化するケースとして、2つのパターンを挙げる。
1つ目は、メンテナンスの負荷が高くなりすぎるケースだ。導入時点から自動テストを多く作りすぎたり、メンテナンス性を考慮しない作り方をしてしまうと、リリースの頻度にテストの更新が追いつかなくなる。
2つ目は、開発者やPdMなど周囲の巻き込みが足りないケースだ。「テスト自動化はQAチームがやること」と認識されてしまうと、特定のチームに責任が閉じてしまい、組織全体での活用につながらない。
ツール選定より運用・体制の問題が大きい
また、テスト自動化が途中で止まってしまう原因として、「ツール選定の問題」と「運用・体制の問題」のどちらが大きいのだろうか。
「運用・体制の問題が大きいですね」と伊藤は断言する。
「もちろん、ツール選定も大事なポイントです。しかし、一般にツールは時間とともに機能が充実しますし、きちんとトライアルで見定めることができれば、基本的には『ツール選定で大失敗した』ということはないはずです。一方で運用・体制の問題は、どのツールを選定したとしても起こりえます。最高のツールを導入しても、うまく使えなければ効果は得られません」
最近増えている「静かな失敗」
失敗パターンにも変化が見られる。過去にはそもそも導入に至らない「導入失敗」のパターンも多かったが、ツールの進化や情報の充実により、導入自体に失敗するケースは減っている。
一方で最近増えているのは、「静かな失敗」とでも呼ぶべきパターンだ。
「テスト自動化ツールを導入して、一見ずっと継続できているようだけれども、成果につながっていない、というケースです」と伊藤は説明する。
具体的には、毎日テストを実行しているのに失敗しても誰も気に留めない「オオカミ少年化」、テストは成功しているが有効なテストではないためバグを見逃す、テストを自動化したのに業務が効率化されず以前と同じかそれ以上の手間がかかっている、といった状態だ。
ツールが進化し、自動テストを作って実行するだけなら簡単になった。だからこそ、「回しているだけ」の状態に陥りやすくなっているとも言える。
テスト自動化を継続させるために押さえるべきポイント
テスト自動化が続かなくなる理由を見てきたが、では継続させるためには何が必要なのか。伊藤が挙げるポイントは3つある。運用を具体的に想定すること、属人化を防いで皆で取り組むこと、そして推進役への組織的なバックアップだ。
運用を具体的に想定する
テスト自動化を継続させるために最初に意識すべきこととして、 「テスト自動化の運用をできるだけ具体的に想定することが大切です」と伊藤は答える。
「なんとなく自動化を始めることは『できてしまう』ようになっているのですが、大事なのは作った自動テストを日々実行し、失敗したら原因を調べて直すという保守運用のところです」
運用時にどのようなタスクが発生するのか、考えるべきポイントは何なのか。これらは実際にやってみないとわからない部分も大きい。そのため、小さく試して自組織にナレッジを貯めていくか、外部の専門家を頼って知見を得ながら進めることが重要だという。
属人化を防ぎ、皆で取り組む
継続のためのもう一つのポイントは、属人化を防ぐことだ。
「実際に自動テストを運用している会社では、たとえば週ごとに『今週のE2E自動テスト確認当番』のような役割を設けているところもあります。その週に実行した自動テストはその人が結果を確認し、失敗していたら原因調査からテストの修正まで行う運用です」
こうした仕組みには、特定の個人がボトルネックにならないというメリットに加え、全員がテスタビリティ(テストのしやすさ)に意識を向けるようになるという効果もある。当番制であれば、自動テストが頻繁に失敗したり誤検知が多かったりすると困るのは自分だからだ。
推進役への組織的なバックアップ
伊藤は、テスト自動化の推進役に対する組織的なサポートの重要性も強調する。
「自動テストを普及する役割というのは、開発組織内の仕事の進め方やプロセスを改善することにもつながります。しかし、関係者も多く、『現場を変えたくない』という抵抗を受ける場面もあります」
地道で、目に見える成果につながるまで時間がかかる活動だからこそ、マネージャーや組織側の理解と適切な評価が欠かせない。推進役が頑張っても評価されない状況では、担当者にとってのメリットがなく、継続は難しくなる。
生成AIの登場でテスト自動化ツールは何が変わったのか
ここまで、テスト自動化の継続に必要な要素を見てきた。では、近年注目されている生成AIの登場は、テスト自動化にどのような影響をもたらしたのだろうか。伊藤によれば、コードを書くハードルは大きく下がった一方で、テストを「考える」部分や運用の難しさは依然として変わらないという。
コードを書くハードルが大きく下がった
生成AIの登場がテスト自動化の現場にもたらした最も大きな変化について、 「一番大きいのは、自動テストスクリプトを生成AIが書けるようになったことです」と伊藤は語る。
「ChatGPTやGitHub Copilotが盛り上がってすぐのころに個人で試してみましたが、当時はまだ実務では使えない印象でした。しかし、AIエージェントがブラウザを操作できるようになったり、Playwright MCP(Model Context Protocol:AIモデルが外部ツールと連携するための仕組み)やPlaywright Agentが登場したりして、生成AIがテスト自動化で現実的に使えるようになりました」
結果として、これまで「コードはあまり書けないから」とSeleniumやPlaywrightでの自動化を敬遠していた人も、チャレンジできるようになった。これもテスト自動化のハードルが下がった一因だ。
テストを「考える」部分は変わらない
一方で、生成AIがあっても変わらない部分もある。
「テストそのものを考えるところは、もうしばらくはあまり変わらないのではないでしょうか。やりたいテストを自動化するところは生成AIで実現できる割合も多いのですが、そもそもどんなテストをすればいいのか、までは難しいと思います」
現状でも、ソースコードを読み取ってE2Eテストシナリオを生成することはできる。しかし、そのシナリオの妥当性は人間が確認する必要がある。
「テストエンジニアやQAエンジニアは、要件や仕様に明示されていないことを推測したり、リスクベースで考えたりします。よく『行間を読む』と言いますが、こうした部分は生成AIでもまだ変わらないところです」
運用は自動化ほど簡単にならない
「生成AIを使えばテスト自動化が簡単になる」という期待について、現場目線ではどう見ているのだろうか。
「テストを自動化するのは簡単になると思います。しかし、作った自動テストを運用し続けるのは、自動化ほどは簡単にならないのではないでしょうか」と伊藤は指摘する。
「いま時点で『PlaywrightとAIエージェントがあれば、AIが自律的に自動テストをするので人間が要らない』といった極論を目にすることもあります。しかし、自動テストで大事になる『運用』のところを軽くみている気がしますね」
生成AIによって運用に関する個々のタスクは楽になるだろう。しかし、どのテストをどのタイミングで行うか、失敗の原因をどう調査するかといった判断には、依然として人間の目が必要だ。
特に注意すべきは、生成AIで生成したテストケースやテストコードを継続的にメンテナンスするには、結局人間がその中身を理解する必要があるという点だ。自動テストの運用を3年、5年と長期にわたって続けようと思えば、それなりの大変さは残る。
生成AI時代に、現場で使われ続けるテスト自動化ツールの条件
生成AIの登場によってテスト自動化のあり方が変化する中で、現場で長く使われ続けるツールには何が求められるのだろうか。伊藤が挙げるのは、機能面だけでなくツールの思想や自社文化との相性、サポート品質といったソフト面の重要性だ。そして、生成AIを活用するには、ツールのオープン性も欠かせないという。
ハード面だけでなくソフト面も重要
現場で使われ続けるテスト自動化ツールの共通点について、伊藤は次のように語る。
「テスト自動化ツールを選ぶ際、機能比較表を作るなどして、『正解』や『一番優れているもの』を選ぼうとしがちです。これも必要な視点ではありますが、ツールの思想の違いや、自社カルチャーに合うかどうか、サポートのスピード感や丁寧さなど、ハード面だけでなくソフト面が影響することも多いんです」。
機能やコストといった定量的な要素だけでなく、ツールの思想と自社の文化が合うか、困ったときにサポートが頼りになるか、といった定性的な要素も、長く使い続けられるかどうかを左右する。
オープンであることの重要性
では、生成AIをテスト自動化に活かすために、ツール側に求められる条件は何か。
「一定オープンであることが大事になってくると考えています。公式のMCPサーバーがあることや、外部のAIモデル──ユーザーが自社で契約・用意しているものを使えることなどです」
ユーザーが自由に生成AIを組み合わせて活用できる柔軟性が、今後ますます重要になっていくだろう。
これからテスト自動化ツールを選ぶ際に考えるべきポイント
では、これから実際にテスト自動化ツールを選定する際には、何から始めるべきだろうか。伊藤は、理想的には運用イメージを持つことだが、初めてテスト自動化に取り組む場合はトライアルから始めるのが現実的だという。また、生成AIの流行に振り回されないためには、自組織のプロセスを言語化してから検討することが重要だと語る。
まずは運用イメージを持つ、難しければトライアルから
これからテスト自動化ツールを検討する人は、何から始めるべきだろうか。
「理想的には、先にテスト自動化の目的や、どんなテストを自動化し、どのくらいの頻度で実行するのか、結果は誰が確認するのか、など運用のイメージを具体的に持つところから始めるのがよいと思います」と伊藤は言う。
しかし、テスト自動化の経験がない状態では、運用イメージを持つこと自体が難しい。その場合は、まず自動化したい対象(Webアプリやモバイルアプリなど)に対応したツールをいくつか選び、トライアルでテスト自動化を体験するところからスタートするのが良いという。
「その過程で、使いやすい、自分たちの目的達成に近づくツールが見えてくることもあります。また、ソフト面──サポートの質や、ツールがカルチャーマッチしているかなども判断軸として持っておくことが大事です」
生成AIに振り回されないために
生成AIというキーワードに振り回されないためには、どうすればよいのか。
「生成AIにはたくさんの可能性がありますし、今までとは全く違った業務のやり方を実現できるのでは、という視点は必要です。ただ、そこには一足飛びで至ることはできません」
伊藤が勧めるのは、愚直なアプローチだ。まず現状の自組織のテストプロセスを言語化する。テストアーキテクチャやプロセスフローダイアグラム(PFD:プロセスと成果物の連鎖をフローでつないで表現する図)などを書き出し、その中でどこに生成AIが適用できそうか検討する。そして、生成AI適用後のプロセスを設計する。こうしたステップを踏むことで、流行に振り回されずに済む。
MagicPodが向いているチーム
ここまで、テスト自動化を継続させるための考え方や、ツール選定のポイントを見てきた。MagicPodもテスト自動化ツールを提供しているが、具体的にどのようなチームに向いているのだろうか。
「組織の規模や業種を問わず皆さんに利用していただきたいという気持ちですが、たとえば品質やテストに関する意識が高いチームで、自分たちでプロセスや仕組みを日々ブラッシュアップしていくというカルチャーのある方に使っていただくのが向いていると思います」
ツールによっては、提供会社が考えるベストプラクティスに乗っかることで成果が出やすいタイプのものもある。しかしMagicPodは違うアプローチだと伊藤は説明する。
「MagicPodの場合は、ツールがQA・テストのやり方を規定してそれにあわせてもらうのではなく、先にユーザーさんの開発組織でやりたいやり方・仕組みがあって、それを構成する要素としてMagicPodが存在する形のほうが活きます」
まずやってみる、でも途中で立ち止まって設計する
最後に、テスト自動化を検討している方、続けることに悩んでいる方へのメッセージを聞いた。
「生成AIもそうですし、各種ツールの進化に伴って、テスト自動化を始めるハードルは以前よりもだいぶ下がって、気軽に試せるようになりました。目的を明確にすることや、運用イメージを具体的に持つことが大事とお伝えしましたが、同時に『とりあえずやってみる』のも大切です」
「まずやってみる、でもちゃんと途中で立ち止まって設計する。この流れでぜひチャレンジしてみていただけると嬉しいです。その際はぜひMagicPodも候補に入れてください」
MagicPodでは、「まずやってみる」ための第一歩として、2週間の無料トライアルを提供しています。 実際の操作感を確かめてみたい方は、ぜひご活用ください。
まとめ
本記事では、テスト自動化ツールを取り巻く現状や、現場で継続できなくなる理由、そして生成AIの登場によって変わった点・変わらない点を整理してきました。 インタビューを通じて明らかになったのは、テスト自動化の成否は流行りの技術や機能の多さではなく、運用体制の設計や組織的なサポート、自分たちの現場に無理なく組み込めるかに左右されるという点です。
ツール選定に迷っている場合は、まず実際に触れながら自分たちの体制や運用に合うかを確かめることが重要です。MagicPodでは無料トライアルも用意しています。トライアル前の運用相談からでも対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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