QAにおけるテスターとは?QAエンジニアとの違い・役立つ資格を解説!
ソフトウェア開発の現場で耳にする「テスター」という職種。QA活動において重要な役割を担っていますが、「QAエンジニアとは何が違うの?」「どんな仕事をしているの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。本記事では、テスターの業務内容やQAエンジニアとの違い、キャリアパスや役立つ資格まで、わかりやすく解説していきます。
目次
QAとは?
QA(Quality Assurance)は「品質保証」を意味し、製品やサービスが品質基準を満たすことを保証する活動です。バグ発見だけでなく、開発プロセス全体で品質を作り込む包括的な取り組みで、テスト計画策定、品質基準設定、テスト実施、バグ管理、プロセス改善などが含まれます。この活動の中心を担うのが「QAエンジニア」と「テスター」で、両者は品質向上を目指しますが、業務範囲や求められるスキルに違いがあります。そのため、QAエンジニアとテスターの違いから詳しく見ていきましょう。
QAエンジニアとテスターの違い
QAエンジニアとテスターは、どちらも製品の品質を守る重要な存在ですが、その役割や責任範囲には明確な違いがあります。まずは、QAエンジニアとテスターの違いについての概要を把握し、その後、各項目について詳しく見ていきましょう。
QAエンジニアとテスターの違いの概要
QAエンジニアとテスターの主な違いは以下の通りです。
- 業務内容:QAエンジニアは「品質保証活動全体」を担当、テスターは「テスト実行」中心
- スキル:QAエンジニアはプログラミングと戦略的思考、テスターは観察力と几帳面さ
- 年収:QAエンジニアは400万円~600万円程度、テスターは370万円程度
- キャリア:QAエンジニアの方が多様な選択肢がある
- 将来性:QAエンジニアの需要がより高まっている
それでは、これらの違いについて、項目ごとに詳しく見ていきましょう。
1. 主な業務内容
QAエンジニアの業務内容
QAエンジニアは、テスト実行だけでなく品質保証活動全体に関わります。どのようなテストを実施すべきかという戦略立案から、テスト計画の作成、テスト設計、テスト自動化の導入まで、より上流工程から品質に携わります。
具体的には、テスト自動化スクリプトの作成、CI/CDパイプラインへのテスト組み込み、品質メトリクスの分析、開発プロセスの改善提案などを行います。プログラミングスキルを活用して効率的なテスト環境を構築し、チーム全体の生産性向上に貢献する役割です。
テスターの業務内容
一方テスターは、主に「テストの実行」を担当する役割です。テスト仕様書やテストケースに従って、実際にソフトウェアを操作し、期待通りに動作するかを確認します。画面の表示、ボタンの動作、データの入出力など、細かい部分まで丁寧にチェックし、バグを発見したら詳細な再現手順とともに記録します。
テスト結果の報告書作成や、バグトラッキングツールへの登録、開発チームとのコミュニケーションも重要な業務です。手動テストも多いため、同じテストを繰り返し実行する根気強さも求められます。
2. 求められるスキル
QAエンジニアに求められるスキル
QAエンジニアには、テスターのスキルに加えて、より高度な技術力が必要です。プログラミング言語(Python、Java、JavaScriptなど)を使った自動化スクリプトの作成、テストフレームワーク(Selenium、Appiumなど)の操作、CI/CDツール(Jenkins、GitLab CIなど)の理解が求められます。
さらに、テスト戦略を立案するための論理的思考力、品質メトリクスを分析するデータ分析能力、開発プロセス全体を俯瞰できる広い視野も重要です。技術的なスキルとビジネス視点の両方を備えることが、優れたQAエンジニアの条件と言えます。
テスターに求められるスキル
テスターは、細部まで注意を払う観察力と、バグを見逃さない集中力が不可欠です。テスト仕様書を正確に理解し、手順通りに実行できる几帳面さも重要になります。
また、発見したバグをわかりやすく文書化するドキュメンテーション能力、開発者と円滑にコミュニケーションを取れる対人スキルも求められます。基本的なITリテラシーがあれば未経験からでも始められるため、IT業界への入り口として選ばれることも多い職種です。
3. 年収
QAエンジニアとテスターの役割の違いは企業や開発組織によって異なる場合があり、一概にどちらの年収が高いとは言えません。
QAエンジニアの年収
QAエンジニアの平均的な年収は、400万円~600万円程度といわれています。一般的に、QAエンジニアは品質保証の全体的なプロセスに関与し、テスト計画の策定、テスト設計、テスト分析・評価・報告といった幅広い業務をカバーするため、年収に差が出る傾向があります。
テスターの年収
テスターの平均年収は、370万円程度といわれています。未経験からスタートする場合はより低い水準からのスタートとなり、経験を積むことで徐々に上昇していきます。
ただし、実際の年収は企業規模、勤務地、個人の経験やスキルレベルに大きく左右されます。また、QAやテストに関連する資格を取得することで、年収が高くなる可能性もあります。昇進の条件として資格取得を義務付けている企業もありますので、キャリアプランを考える上で資格取得も視野に入れると良いでしょう。
4. キャリアパス
QAエンジニアのキャリアパス
QAエンジニアは、多様なキャリアパスを選択できます。
- QAマネージャー/QAリーダー:組織全体の品質保証体制を構築し、チームをマネジメントする
- テストアーキテクト:テスト自動化基盤の設計や、全社的なテスト戦略を策定する
- DevOpsエンジニア/SRE:開発と運用の橋渡しをし、継続的なデリバリーを実現する
- 品質コンサルタント:企業の品質向上を支援する独立したコンサルタントになる
- プロダクトマネージャー:品質の視点を持ちながら、製品全体をマネジメントする
技術力と品質に対する深い理解を活かして、幅広いキャリアを築けるのがQAエンジニアの魅力です。
テスターのキャリアパス
テスターからのキャリアパスは、大きく2つの方向性があります。
1つ目は、テスト業務のスペシャリストとして成長する道です。シニアテスターやテストリーダーとして、テストチームのマネジメントやメンバー育成を担当します。特定の業界やドメインに精通した「テストスペシャリスト」として、専門性を深めることも可能です。
2つ目は、QAエンジニアへステップアップする道です。プログラミングスキルやテスト自動化の知識を習得することで、より上流工程に関わり、戦略的な品質保証活動を担えるようになります。多くのテスターが、キャリアアップの選択肢としてQAエンジニアを目指しています。
5. 将来性
QAエンジニアの将来性
QAエンジニアの将来性は非常に高いと言えます。ソフトウェア開発のスピードが加速する中、品質を担保しながら迅速にリリースする、いわゆる「Quality at Speed(品質とスピードの両立)」の実現が求められているためです。
テスト自動化、CI/CDパイプラインの構築、AIを活用したテスト、クラウド環境でのテストなど、技術の進化とともにQAエンジニアの役割はますます重要になっています。DevOpsやアジャイル開発の普及により、開発プロセス全体に関わるQAエンジニアの需要は今後も拡大していくでしょう。
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によれば、IT人材の不足は今後さらに深刻化すると予測されており、特に品質保証の専門性を持つ人材は貴重な存在となります。
テスターの将来性
テスト業務は今後も一定の需要が続くと予想されますが、単純な手動テストは徐々に自動化に置き換わっていく傾向にあります。そのため、テスターとして長期的なキャリアを築くには、以下のような戦略が有効です。
- 自動化スキルを習得し、QAエンジニアへステップアップする
- 探索的テストなど、人間の創造性や判断力が必要な領域に特化する
- 特定業界のドメイン知識を深め、その分野のテスト専門家になる
変化に対応しながらスキルアップを続けることで、テスターとしての価値を維持できます。
どちらの職種も品質向上に欠かせない存在ですが、キャリアの幅や将来性を考えると、テスターからQAエンジニアへのステップアップを視野に入れることをおすすめします。
ここまでQAエンジニアとテスターの違いを理解したところで、次はどちらの職種を目指す場合でも役立つ資格について見ていきましょう。専門的な知識とスキルを証明できる資格の取得は、キャリアアップの大きな武器になります。
QAエンジニア・テスターの評価につながる資格
品質保証の分野では、体系的な知識とスキルを証明する資格がいくつか存在します。これらの資格を取得することで、転職市場での評価が高まるだけでなく、実務においても理論的な裏付けを持って業務に取り組めるようになります。ここでは、特に評価の高い代表的な資格を紹介します。
JSTQB認定テスト技術者資格
JSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board)認定テスト技術者資格は、ソフトウェアテストに関する国際標準規格(ISTQB)に基づいた日本の資格制度です。テスト業界で最も認知度が高く、多くの企業が採用や評価の基準として活用しています。
資格の構成:
JSTQBの資格は、主に以下の2つのレベルで構成されています。
- Foundation Level(基礎レベル):テストの基本的な知識、用語、テスト技法を問う試験。テスターとしてのキャリアをスタートする際に取得しておきたい入門資格です。テストプロセス、テスト設計技法、テスト管理など、実務で必要となる基礎知識を体系的に学べます。
- Advanced Level(上級レベル):Foundation Levelの知識を前提に、より専門的で高度な内容を扱う資格です。テストマネージャー、テストアナリスト、テクニカルテストアナリストなど、役割別に細分化されており、自身のキャリアパスに応じて選択できます。
JSTQBは業界知名度が高く、体系的な知識の証明として有効なため、まずはここから始めることをおすすめします。詳細な試験内容や最新情報については、JSTQB公式サイトをご確認ください。
JCSQEソフトウェア品質技術者資格認定
JCSQE(Japan Committee for Software Quality Engineering)のソフトウェア品質技術者資格認定は、品質管理や品質保証の幅広い知識を証明する資格です。一般財団法人日本科学技術連盟が主催しており、品質保証の全体像を体系的に学べます。
資格の構成:
- 初級:ソフトウェア品質の基本的な概念や用語を理解していることを証明します。品質管理の基礎知識やテスト技法など、実務の土台となる知識を習得できます。
- 中級:品質マネジメントシステム、プロセス改善、品質メトリクスなど、実務で活用できるより高度な知識を証明します。組織における品質活動を推進できるレベルの専門性が求められます。
この資格は、テスト技法だけでなく、品質マネジメントシステム、プロセス改善、統計的品質管理など、品質保証の全体像を網羅しています。QAエンジニアとして組織の品質向上をリードする立場を目指す方には、特に有効な資格です。品質保証部門のマネージャーや品質コンサルタントを目指す際にも、大きなアピールポイントになります。
詳細な試験内容や最新情報については、JCSQE公式サイトをご確認ください。
その他推奨資格
上記の2つの資格に加えて、IT検証技術者認定試験(IVEC)も検討する価値があります。IVECは一般社団法人IT検証産業協会(IVIA)が主催する資格で、実務を重視した内容です。キャリアレベル毎に「アシスタント」「テスター」「デザイナー」「アーキテクト」「エバンジェリスト」のクラスが設定されており、この資格を取得することで、ソフトウェアテスト技術者として業界で高い評価を受けることができます。
まとめ
QAエンジニアは品質保証活動全体を設計・管理する役割、テスターはテスト実行を中心に品質を守る役割です。求められるスキルや年収、キャリアの幅には違いがありますが、どちらもソフトウェア開発に欠かせない重要な職種です。
将来性を考えると、テスト自動化スキルを身につけてQAエンジニアへステップアップすることが、キャリアの選択肢を広げる鍵となります。テスターでも扱いやすいテスト自動化ツールを活用すれば、スムーズにスキルアップを始められます。ぜひこの機会にテスト自動化への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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