QAとQCの違いを徹底解説 | 品質保証と品質管理の役割・資格・実践ステップまで
ソフトウェア開発の現場で頻繁に使われる「QA」と「QC」という言葉ですが、その違いを明確に説明できるでしょうか。どちらも「品質」に関わる重要な概念ですが、実は目的やアプローチが大きく異なります。本記事では、QA(品質保証)とQC(品質管理)の基本的な違いから、それぞれを担うエンジニアの役割、役立つ資格、実践的な品質保証や品質管理の進め方まで体系的に解説します。
目次
ソフトウェアにおける品質とは
QAとQCの違いを理解する前に、まず「品質」の定義を明確にしましょう。
ソフトウェアの品質は、単に「バグがないこと」を意味するわけではありません。ISO/IEC 25010などの国際規格では、機能性、性能効率性、互換性、使いやすさ、信頼性、セキュリティ、保守性、移植性という8つの特性で定義されています。
ユーザーにとっての品質は「期待通りに動作し、快適に使えること」です。開発チームにとっては「仕様を満たし、バグが少なく、メンテナンスしやすいこと」を意味します。ビジネス視点では「市場投入のタイミングとコストバランスが適切であること」も品質の一部です。
つまり、ソフトウェアの品質とはステークホルダーの要求や期待を満たす度合いであり、技術的な完璧さだけでなく、ユーザー満足度やビジネス価値まで含んだ総合的な評価指標なのです。
この多面的な品質をどう確保するか。そこで登場するのが、QA(品質保証)とQC(品質管理)という2つのアプローチです。
QA(品質保証)とQC(品質管理)の違い
QAとQCは、どちらも品質を高めるための活動ですが、アプローチと目的が明確に異なります。
QA(品質保証)とは
QA(Quality Assurance:品質保証)は、製品やサービスの品質を確保するための包括的なアプローチです。
テスト技術者資格制度(JSTQB)のシラバスでは、QAを「プロセスの実装と改善に焦点を当てた、プロセス指向の予防的アプローチ」と定義しています。
QAの最大の特徴は、問題が発生してから対処するのではなく、問題を未然に防ぐという考え方です。適切なプロセスを設計し、それを正しく実行すれば、結果として高品質な製品が生み出されるという信念に基づいています。
また、QAはプロジェクトに参加するすべての人の責任であり、開発者、テスター、マネージャーなど、関わるすべての人が品質に対する責任を持ちます。
QC(品質管理)とは
QC(Quality Control:品質管理)は、完成した製品の品質を「確認する」活動です。実際の成果物が要求仕様や品質基準を満たしているかを検証し、問題があれば修正します。
QCの特徴は「検出的」であることです。製品やその一部が完成した段階で、実際にテストや検査を行い、欠陥を見つけ出します。
QCは「この製品は出荷しても大丈夫か?」という最終チェックの役割を果たし、具体的な品質レベルを測定・報告します。
比較表で見るQAとQCの違い
| 項目 | QA(品質保証) | QC(品質管理) |
|---|---|---|
| 焦点 | プロセス | 製品 |
| アプローチ | 予防的(問題を未然に防ぐ) | 検出(問題を見つける) |
| 実施タイミング | 開発の全工程 | 開発の後半(テスト段階) |
| 主な活動 | プロセス改善、標準化、計画策定 | テスト実施、バグ検出、検証 |
| 目的 | 品質を作り込む仕組みづくり | 品質基準をみたいしているか確認 |
| 責任範囲 | 組織全体、プロジェクト全体 | 個別の成果物 |
| アウトプット | 品質計画書、プロセス文書、標準 | テスト報告書、バグレポート |
QAは「川上」での活動、QCは「川下」での活動と言えます。理想的な品質管理体制としては、QAによって問題が発生しにくいプロセスを構築し、QCでそれを検証するという相互補完的な関係が成立します。
QA(品質保証)・QC(品質管理)を担うエンジニアの仕事
QAとQCの概念的な違いを理解したところで、実際にこれらの業務を担当するエンジニアの具体的な役割を見ていきましょう。
QAエンジニアの役割と業務内容
QAエンジニアは、品質を確保するための仕組みづくりと、プロジェクト全体の品質向上をリードする役割を担います。単にテストを実行するだけでなく、プロジェクトの上流工程から関与し、品質戦略を立案します。
具体的な業務内容:
- テスト戦略・計画の策定
- 品質基準の定義(リリース判定基準や品質メトリクスの設定)
- プロセス改善(開発フローの分析と改善提案)
- 自動化推進(テスト自動化ツールの導入検討と実装支援)
- 教育・啓蒙(チームメンバーへの品質意識向上のための研修)
- ステークホルダー調整(各部門との品質に関する調整)
QAエンジニアには、テクニカルスキルだけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクトマネジメント能力も求められます。品質を組織文化として根付かせるため、チーム全体を巻き込む推進力が必要です。
QCエンジニアの役割と業務内容
QCエンジニア(テストエンジニアとも呼ばれます)は、実際に製品をテストし、バグを検出・報告する実務担当者です。製品の品質を直接確認し、リリース可否の判断材料を提供します。
具体的な業務内容:
- テストケースの設計・作成
- 各種テストの実施(機能テスト、リグレッションテスト、探索的テストなど)
- バグの検出と報告(不具合の再現手順や環境情報を詳細に記録)
- テスト結果の記録・分析
- 修正確認テスト
- テスト自動化スクリプトの作成
QCエンジニアには、仕様を正確に理解する力、細部に気づく観察力、論理的思考力が求められます。また、効率的なテスト実施のためには、テスト技法の知識やテスト自動化ツールの活用スキルも重要です。
ここまででQAエンジニアとQCエンジニアのそれぞれの役割と業務内容を解説してきました。これら2つの役割が連携することで、プロセスと製品の両面から品質が担保されます。
QAとQCで役立つ資格
品質保証・品質管理の業務において、体系的な知識を証明する資格取得は、スキルアップとキャリア形成に有効です。
QA向け資格
JSTQB認定テスト技術者資格は、日本で最も広く認知されているソフトウェアテストの資格です。国際的なISTQB(International Software Testing Qualifications Board)の認定を受けており、グローバルでも通用する知識の証明になります。
JSTQBのレベル:
- Foundation Level(FL):テストの基礎知識を証明する入門資格。テスト設計技法、テストプロセス、欠陥管理などを学習
- Advanced Level(AL):テストマネージャー、テストアナリスト、テクニカルテストアナリストなど、専門性の高い役割向けの上級資格
QAエンジニアを目指す方には、まずFoundation Levelの取得をおすすめします。実務経験と合わせて学習することで、より深い理解が得られます。
また、品質管理検定(QC検定)も、製造業だけでなくソフトウェア業界でも評価される資格です。統計的品質管理や品質改善手法を学べるため、データに基づいた品質判断を行いたいQAエンジニアに適しています。
QC向け資格
QCエンジニア(テストエンジニア)には、実践的なテストスキルを証明する資格が有効です。
JSTQB Foundation Levelは、QCエンジニアにとっても必須の基礎資格と言えます。加えて、以下のような資格も検討価値があります。
- ソフトウェア品質技術者資格認定(JCSQE):日本科学技術連盟が主催する、より実践的な品質技術を問う資格
- 各種テスト自動化ツールの認定資格:Selenium、Appiumなど、具体的なツールの習熟度を示す資格
また、セキュリティテストに携わる場合は情報処理安全確保支援士やCEH(Certified Ethical Hacker)なども視野に入ります。
おすすめの学習リソース
資格取得のための学習には、以下のリソースが役立ちます。
- 公式シラバス:JSTQBやJCSQEの公式サイトから無料でダウンロード可能
- 書籍:『ソフトウェアテスト教科書 JSTQB Foundation』などの定番参考書
- オンライン学習プラットフォーム:Udemy、Courseraなどでテスト技法や自動化ツールの実践的なコースを受講
- コミュニティ:JaSST(ソフトウェアテストシンポジウム)やテスト関連の勉強会への参加
資格は知識を体系化し、スキルを客観的に証明する有効な手段ですが、最も重要なのは実務での経験です。資格取得を通じて学んだ理論を、実際のプロジェクトで適用していくことで、真の実力が身につきます。
品質保証(QA)と品質管理(QC)の進め方5ステップ
QAの理論を理解したところで、実際のプロジェクトでどのように品質保証・品質管理活動を進めればよいのか、実践的な5つのステップを紹介します。ここでは、QA(品質保証)とQC(品質管理)の両方の活動を含む、包括的な品質マネジメントのプロセスを解説します。
ステップ1(QA):品質目標とリスクの特定
プロジェクト開始時に、ステークホルダーと協議して具体的な品質目標を設定します。「バグゼロ」といった抽象的な目標ではなく、「致命的バグ0件、重大バグ5件以内」や「主要機能のカバレッジ90%以上」といった測定可能な指標を定めます。
同時に、プロジェクトの特性に応じたリスク分析を行います。新技術の採用、タイトなスケジュール、外部システム連携の複雑さなど、品質に影響を与える要因を洗い出し、優先順位をつけます。
ステップ2(QA):テスト戦略と計画の策定
リスク分析に基づいて、適切なテスト戦略を立案します。どの工程でどのようなテストを実施するか、自動化の範囲はどこまでか、テスト環境はどう準備するかなどを文書化します。
テスト計画の主要要素:
- テストスコープ(何をテストし、何をテストしないか)
- テストアプローチ(手動/自動の割合、テスト技法の選択)
- 体制と役割分担
- スケジュールとマイルストーン
- 終了条件(リリース判定基準)
ステップ3(QC):テスト設計とテストケース作成
仕様書や設計書に基づいて、具体的なテストケースを設計します。同値分割、境界値分析、デシジョンテーブルなどのテスト設計技法を活用し、効率的かつ網羅的なテストケースを作成します。
特に重要なのは、テストの優先順位付けです。すべての機能を均等にテストするのではなく、リスクの高い箇所や変更の多い箇所に重点的にテストをします。
ステップ4(QC):テスト実行と自動化の推進
テスト計画に従ってテストを実行します。ここで効率化のカギとなるのがテスト自動化です。特にリグレッションテストのような繰り返し実行が必要なテストは、自動化することでデグレを確実に検出することができます。
ノーコード・ローコードのテスト自動化ツールを活用すれば、プログラミングスキルが限定的なメンバーでも自動テストを構築できます。CI/CDパイプラインに組み込むことで、コードの変更があるたびに自動的にテストが実行され、品質の継続的な監視が実現します。
ステップ5(QA):結果分析と継続的改善
テスト結果を単に記録するだけでなく、分析して改善につなげます。バグの傾向分析(どの機能に集中しているか、どのフェーズで混入しているか)を行い、プロセスの弱点を特定します。
プロジェクト終了後には必ず振り返りを実施し、「何がうまくいったか」「何を改善すべきか」を整理します。これらの学びを次のプロジェクトに活かすことで、組織全体の品質成熟度が向上します。
さらに詳しい品質管理のベストプラクティスについては、ISO/IEC 25000シリーズなどの国際規格も参考になります。
まとめ
本記事では、QA(品質保証)とQC(品質管理)の違いを中心に、ソフトウェアの品質を確保するための知識を解説しました。
QAは「プロセス」に焦点を当てた予防的アプローチ、QCは「製品」に焦点を当てた検出的アプローチです。両者は相互補完的な関係にあり、どちらも高品質なソフトウェア開発には欠かせません。
品質目標設定→戦略策定→テスト設計→実行と自動化→分析と改善のサイクルを回すことで、継続的な品質向上が実現します。特に反復的なテスト作業は自動化で効率を上げることが重要になってきます。その際はテスト自動化ツールを活用することで、テストを作成すればデプロイごとにテストを実行できるので、開発のリードタイムを短縮しつつ品質を担保することができます。ぜひこの機会にテスト自動化ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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