QAエンジニア採用が成功する求人票の書き方|候補者が本当に見ている「品質文化」とは
こんにちは。MagicPodでエバンジェリストをしているYoshiki Itoです。
「QAエンジニアを募集しているけれど、なかなか応募が来ない」「応募はあるけれど、求めている人材とマッチしない」——こうした悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。 私自身もQAエンジニアとして転職を経験し、また事業会社でQA採用も行なっていました。これらの、採用する側・される側の両方を経験してきた中で見えてきたことがあります。
本記事では、QAエンジニアの採用がうまくいかない理由と、求人票でどのように自社の魅力を伝えればよいかについてお伝えします。
目次
この記事の対象と前提
本記事は、以下のような方を対象としています。
- QA・テストについて主体的に動ける人材を採用したい方
- 継続的に働いてくれる人を求めている方
- QAチームを立ち上げようとしているマネージャーの方
- 主要なQAエンジニアが退職し、後任を探している方
逆に、以下に当てはまる場合は本記事の対象外となります。
- 一時的な人手不足への対応を考えている方
- 「作業者」としての要員調達を目的としている方
後者のケースでは、本記事でお伝えする内容とはアプローチが異なります。主体的に品質向上に取り組んでくれる人材を採用したい場合に、参考にしていただければと思います。
QAエンジニアはなぜ転職するのか
採用を成功させるためには、まず候補者がなぜ新しい環境を求めているのかを理解することが大切です。 QAエンジニアの転職動機は、大きく3つに分類できると考えています。
a. 裁量・業務スコープの拡大
「現職では経験できないチャレンジをしたい」という動機です。 たとえば、テスト実行だけでなくテスト設計や品質戦略の立案に関わりたい、テスト自動化に本格的に取り組みたい、開発プロセス全体に関与したい、といったケースがこれにあたります。 現在の環境では業務範囲が限られていて、成長の機会が少ないと感じている方がこの動機を持っていることが多いです。
b. 周囲の理解・協力が得られる環境
「品質やQA業務への理解がある組織に行きたい」という動機です。 QAエンジニアの中には、「品質の重要性が組織に理解されていない」「QAの意見が開発プロセスに反映されにくい」「孤立感がある」といった課題を抱えている方が少なくありません。 そうした環境から、品質を大事にする文化がある組織で働きたいと考えて転職を検討する方は多いです。
c. 労働環境・人間関係
給与や勤務形態、職場の関係性やトラブルなどです。もちろん大切ですが、これには相性もありますし、QAに限らず採用一般に求められる事項です。
以上3つの分類のうち、とくに aとbが採用訴求の軸です。 「こんな挑戦ができる」(動機aへの訴求)と「品質を大事にする文化がある」(動機bへの訴求)をいかに伝えられるかが、採用成功のカギとなります。
採用成功の土台:価値観の理解と尊重
上記のaとbの動機を言い換えるならば、「QA・テストエンジニアの業務内容や価値観を理解し、尊重していること」とも表現できます。QAエンジニアに限らず、自分の業務や職種に対する無理解や、場合によってはネガティブなイメージを払拭するところから始めたい!という方は多くありません。とくに今はQAエンジニアに対するニーズが高まっているため、品質やQAの業務に対する理解の土台がある環境が選ばれやすいのは自然なことです。
候補者が求める価値観とはなにか
QAエンジニアが転職先に求める理解や価値観の例として、以下のようなものが挙げられます。
- 品質を作り込むための活動ができる(阻害されない)
- 「とにかくリリースを急げ」という圧力だけでなく、品質向上の活動が尊重される環境
- 開発プロセスの早い段階からQAが関われる
- 要件定義や設計の段階から品質の観点を入れられる
- 開発とQA/テストが隔たっていない、協調できる
- 「開発 vs QA」ではなく、一緒にプロダクトを作るチームとして働ける
- 品質向上にあたって組織や上司の協力が得られる
- 改善提案が聞き入れられ、実行に移せる環境
これらを一言で表すと、「品質文化があること」です。
「品質はQA/テストエンジニアだけが考えるもの」ではなく、「皆でつくるもの」という理解が組織にある状態が理想です。もちろん、品質文化が根付いていない組織に対して一から根付かせたい、品質に対する無理解を自分が変えてみせる!という方もいるでしょう。しかし、割合としては多くありませんし、かなりのスキル(とそれに見合った高待遇)が必要になります。基本的には、品質文化がある組織で働きたいと考える方が多いのが実情です。
そのため、QAエンジニアを採用する場合は、単純に採用媒体に募集をかけるだけではなく、並行して社内や開発組織の中で品質に対する意識や、品質の重要性への理解を高めておくことが大切になります。
【実践編】求人票で価値観を伝える方法
ここからは実践編として、求人票の書き方についてお伝えします。
要注意な表現とその理由
まず、求人票でよく見かける「要注意な表現」について整理します。
ここで強調しておきたいのは、これらは「絶対にNG」というわけではなく、文脈によっては問題ない場合もあるということです。ただ、意図せず候補者にネガティブな印象を与えてしまう可能性があるため、使用する際は注意が必要です。
| 要注意な表現 | 問題点 | 例外・補足 |
|---|---|---|
| 「単純作業」「コツコツ作業できる人向け」 | 業務の価値を低く見ている印象を与える | ジュニア向け募集で、要件も見合っている場合はOK |
| 「開発者へのキャリアアップも可能」 | QA/テストを他職種より低く捉えている印象を与える | QAの専門家に長く働いてほしい場合は、避けるほうが安全 |
| 「品質の番人」「最後の砦」 | 開発工程終盤のみの出番に見える | プロセス改善など全体関与が明示されていればOK。ミッションクリティカル系では文脈上自然な場合も |
なぜこれらが問題になるかというと、候補者は求人票から「この会社はQAをどう捉えているか」を読み取ろうとしているからです。
「単純作業」と書かれていれば、「この会社ではQAは単純作業として扱われるのだな」と判断されます。「開発者へのキャリアアップも可能」と書かれていれば、「QAは開発者より下に見られているのだな」と受け取られる可能性があります。
その他のよくある失敗パターン
上記以外にも、よくある失敗パターンがあります。
NG例:あいまいな業務内容
「テスト業務全般をお任せします」「品質管理業務」といった記載では、具体的に何をするのかがわかりません。候補者は「自分がやりたいことができるか」を判断できないため、応募をためらってしまいます。
NG例:必須要件の盛りすぎ
「テスト設計経験3年以上」「テスト自動化経験」「CI/CD経験」「アジャイル開発経験」「JSTQB資格保有」……と必須要件を並べすぎると、該当する候補者が極端に少なくなります。本当に必須なものだけに絞ることが大切です。
NG例:QAの位置づけや裁量が見えない
「開発チームの一員として」とだけ書かれていても、QAがどのような立場で、どこまでの裁量を持って働けるのかがわかりません。
効果的な求人票の書き方
では、どのように書けばよいのでしょうか。前述の転職動機a・bに対応する形で整理します。
「こんな挑戦ができる」を伝える(動機aへの訴求)
具体的な業務内容と裁量範囲を明示しましょう。
- どこまで任せるのか(テスト実行だけ?設計も?戦略立案も?)
- どんな経験が積めるのか(テスト自動化、CI/CD構築、品質メトリクス設計など)
- 成長の機会は何か
たとえば、「テスト戦略の立案から実行まで一貫して担当していただきます」「テスト自動化の推進をリードしていただくポジションです」といった書き方です。
「品質を大事にする文化がある」を伝える(動機bへの訴求)
開発プロセスにおけるQAの関わり方や、組織としての品質への姿勢を伝えましょう。
- 開発プロセスのどの段階からQAが関与するか
- QAチームと開発チームの関係性
- 品質に対する経営層や組織の理解
たとえば、「要件定義の段階からQAが参加し、品質の観点を早期に取り入れています」「開発チームとQAチームは密に連携し、スプリントごとに品質レビューを実施しています」といった記載です。もし現状QAエンジニアがおらず、一人目を募集している場合であっても、上流から関われるようにフォローする点など記載しておくとよいでしょう。
また、「品質に対する経営層や組織の理解」に含まれる要素として、役職者によるQAエンジニアへのサポートも期待されます。たまに「QAを採用さえすればあとはうまくいくはず。まるっと任せよう」と考えてしまっている組織があるようですが、高確率で失敗します。品質はQAだけの責任ではなく、優秀なQAであっても周囲の協力なしでは成果を出せません。周囲の協力を後押しするような動きが、採用側には求められます。
必須要件は2-4つに絞る
本当に必要な要件だけを必須とし、それ以外は「歓迎要件」に回しましょう。要件を絞ることで、より多くの候補者に検討してもらえるようになります。
優れたQAエンジニアを採用したい気持ちはわかるのですが、あまりに欲張りな必須要件が書かれていると、応募する側からは「この組織はQAのことがわかっていないな、理解が怪しいな」と思われてしまう可能性があります。また、条件が厳しすぎるとそもそも当てはまる人が市場におらず募集がこなくなってしまいます。
必須要件は最小限のものに絞り、その先のスキルに関しては面接の場で擦り合わせるなどの工夫をしましょう。
QAチームの位置づけと期待役割を明示
「QAエンジニアとして何を期待しているか」「チーム内での役割は何か」を明確にしましょう。これにより、候補者は自分がその役割にフィットするかを判断しやすくなります。 これも先ほど述べた「QAを採用さえすればあとは丸投げ」ではない、という点に関連します。
テスト・QA業務で用いているツールなどの技術スタックを記載する
開発チームやQAチーム内で用いているツール名も具体的に記載しておくことをおすすめします。応募を検討している方が、日々の業務内容やレベル感を推測する参考になります。
まとめ
QAエンジニアの採用を成功させるためのポイントを整理します。
- 候補者の転職動機を理解する
- 裁量・業務スコープの拡大を求めている
- 品質やQA業務への理解がある環境を求めている
- 自社の価値観と文化を求人票で正直に伝える
- 品質文化があるか、なければどう作っていきたいか
- QAにどこまでの裁量を与えるか
- 「価値観の理解と尊重」が伝わる表現を選ぶ
- 要注意な表現を避ける(または文脈を補足する)
- 具体的な業務内容、関わり方、成長機会を明示する
求人票は、候補者との最初の接点です。「この会社はQAをどう捉えているか」が伝わる大切なコミュニケーションの場だと考えて、丁寧に作成していただければと思います。
本記事が、QAエンジニアの採用に悩む方の参考になれば幸いです。