開発者が「一緒に働きたい」と思うQAエンジニアになるために


「でも、自分のPCでは動きますけど?」

この言葉を、QAエンジニアなら誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。これは、開発者の困惑した表情や、Slackで少し防御的なトーンとともに発せられることが多く、今やTシャツにもプリントされるほど、あるあるネタとして定着しています。

しかし、この笑い話の裏には、QAと開発が一枚岩のチームではなく、時に対立関係に陥ってしまうという現実的な課題が潜んでいます。開発者がQAとの連携を避けたままだと、協力体制を築けず、チーム内で摩擦が生じやすくなります。その結果、リリースの遅延や製品品質の低下を招き、最終的にはユーザーの不満につながるという悪循環に陥ってしまいます。

では、開発者に「この人と一緒に仕事がしたい」と思われるQAエンジニアになるには、どうすればよいのでしょうか?
その鍵となるのが、以下の5つの要素を柱としたアプローチです。

  • 詳細なバグチケット
  • 開発者の視点を理解する
  • 心地よいコミュニケーション
  • 技術力を高める
  • 信頼される存在になる

それでは、1つ目から見ていきましょう。


詳細なバグチケット

バグの存在を指摘するだけでなく、迅速なデバッグにつながる文脈と情報を提供することが、真に価値あるQAの役割です。
優れたバグチケットには、以下の情報が含まれているべきです(これに限りませんが)。

  • 実行環境の詳細(OS、ブラウザのバージョン、端末種類など)
  • アプリのバージョンやビルド番号
  • 明確で再現可能な手順
  • 期待される結果と実際の結果
  • スクリーンショットや動画
  • 関連するログやエラーメッセージ

初期調査の内容を共有することも、開発者にとって有益な出発点となります。
例えば、ECサイトで決済が失敗する現象を見つけ、調査の結果、決済サービスが「401 Not Found」を返していたとします。あなたは、サービスが停止している可能性をチケット内で指摘し、ログデータも添付します。

その後、開発者が原因を調査し、実際は決済マイクロサービス側の不具合であることが判明したとしても、あなたの初期分析は具体的な起点を提供したことになります。このように、質の高いバグチケットを一貫して提供することで、バグはただの「面倒事」ではなく、QAと開発がそれぞれの専門性を活かして共同で解決する機会へと変わります。

開発者の視点を理解する

テスト対象の機能については、それを実装した開発者の知見を積極的に取り入れましょう。

開発者の課題や専門性を理解・尊重することは、信頼関係を築くうえで不可欠です。例えば、以下のような質問を投げかけてみてください。

「どんなエッジケースを意識すべきでしょうか?」
「実装に関して注意しておくべき点はありますか?」

こうした質問には2つの利点があります。
1つ目は、より効果的なテストに必要な技術的背景情報が得られること。2つ目は、あなたが「欠陥を探す敵」ではなく「一緒に品質を高める協力者」であると印象づけられることです。

特に、以下のようなケースでは開発者との連携が効果を発揮します。

  • 複雑なビジネスロジックの実装
  • 技術的制約が大きい機能
  • 安定性に課題のある領域
  • 外部サービスと連携する機能

開発者の視点を取り入れることは、あなたの専門性を損なうものではなく、より強化するものだと考えてください。

心地よいコミュニケーション

伝え方ひとつで、相手の受け取り方や行動も大きく変わります。
コミュニケーションスキルはQAエンジニアにとっての基本であり、単にバグを報告するだけではありません。効果的な伝え方とは、「正しさ」を主張するのではなく、相手が素直に受け取り、行動につなげられるよう配慮することです。
コミュニケーションスタイルは人によって異なるため、相手に合わせて柔軟に対応することが重要です。

  • 事実を客観的に伝え、誰かを責めるような表現は避ける
  • 相手の性格やコミュニケーションの好みに合わせたアプローチを取る
  • 内容に応じて、適切な伝達手段(チケット、チャット、対面など)を選ぶ

例えば、ある開発者は詳細な技術説明を好む一方で、別の開発者は影響する部分に絞った報告のみを望むかもしれません。相手に合わせた伝え方を意識することで、受け入れられやすくなり、協働的な雰囲気を作り出すことができます。

技術力を高める

技術的な理解は、QAエンジニアのテスト力と開発チームとの連携力を大幅に高めます。

開発の現場では「シフトレフトテスト (Shift Left Testing)」のようなトレンドが加速しています。もはやUIだけを対象としたブラックボックステストだけでは不十分であり、ソフトウェアの仕組みそのものを理解する力が問われています。

裏側の仕組みを理解していれば、設計レビューやコードレビューの段階で潜在的な問題を事前に指摘できるようになります。さらに、不具合が発生しやすい箇所を見極めたうえで、重点的かつ効率的なテスト設計が可能になります。

このようなスキルを身につけたQAは、いわばフルスタックQA
アプリ全体の品質を俯瞰的に評価できる存在として、開発者にとっても非常に心強いパートナーとなります。

AI&ノーコード時代に必要な4つのQAスキル」にも、この技術基盤の重要性が詳しく述べられています。

信頼される存在になる

信頼とは、品質に対する一貫した責任感と行動によって築かれるものです。

この要素は、前述の4つのスキルを土台から支える、継続的かつ一貫した姿勢に他なりません。
あなたがテストした機能に重大なバグがほとんどないという状態を継続できれば、チームはあなたを「頼れる存在」として認識するようになります。

信頼を築くためには:

  • 期限を守る努力を惜しまない
  • リリース前に重大な問題を見抜けるテストスキルを発揮する
  • 全ての不具合を潰すことに固執せず、リリースに支障がない範囲で現実的な品質基準を見極める
  • 根拠に基づいた判断を提示し、主観的な意見に偏らない

また、要件レビューや設計フェーズなど開発初期から積極的に関与することで、未然に問題を防ぐ役割も果たせます。

信頼性は一朝一夕に得られるものではありません。しかし、日々の積み重ねがやがて確かな評価となり、開発者だけでなくチーム全体から「あなたがいて良かった」と思われる存在になるのです。

品質の門番から、開発のパートナーへ

QAと開発が真に価値を提供できる関係とは、対立ではなく協力の上に成り立ちます。

この5つのポイント(報告、視点、伝え方、技術、信頼)をマスターすれば、単なる「不具合発見役」ではなく、チーム全体で価値を創出する開発パートナーとしての地位を確立できます。
こうした取り組みは、少しずつ関係性を築いていくプロセスでもあります。まずは身近なところから変化を始めて、協力し合う姿勢を丁寧に示していきましょう。気づけば、開発者とのやりとりが衝突の火種ではなく、前向きな協力関係へと変わっているはずです。

Appleのスティーブ・ジョブズの有名な言葉に、こんなものがあります。
「素晴らしい成果は、一人では成し遂げられない。チームで成し遂げられる。」

参考文献:

MagicPodは、モバイルおよびWebアプリケーションテストに対応したAIテスト自動化クラウドサービスです。プログラミングなどの特別なスキルがなくても直感的に使うことのできるデザイン、クラウドでのサービス提供によるメンテナンス性の高さ、AI技術を活用した自動修正によるテストプログラム修正の手間削減などによりリリースサイクルの高速化を支援します。

Original article: https://blog.magicpod.com/qa-engineer-developers-want-team

Aldy Syah Daviq Ramadhan

原文執筆 Aldy Syah Daviq Ramadhan

自動テストと手動テストの両方に精通したQAエンジニアです。効率的なテストフレームワークの構築と、高品質なソフトウェアの提供に取り組んでいます。


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